2012年1月5日木曜日

2011.01.05 第89回全国高校サッカー選手権 準々決勝 立正大淞南高校

第89回全国高校サッカー選手権 準々決勝

2011.01.05  立正大淞南高校(島根県代表) (2-2)PK4-5 ★ フクダ電子アリーナ
(天然芝)

高校サッカー選手権準々決勝。勝てば、夢の国立。
相手は、昨年の一回戦で勝った立正大淞南高校。


これほど応援していて興奮した試合はない。

相手の速いパス、ドリブルになんとか前半1失点でしのぎ、後半のFW清水の同点ヘッドで息を吹き返し、その後の相手の猛攻をなんとか防いだ後の一瞬の隙をつかれ、スローインからの
ロングスロー&ボレーシュートを決められてまたもやリードされ、ポストやバー直撃のお互いのシュートが何本もありどちらに幸運の女神が微笑むのか?全くわからない中、後半アディショナルタイム3分終了間際に相手のゴールキックが短くなり西武台ボールに。上がっていたDF町山が左サイドからクロスを上げFW佐々木とFW清水が二人でヘッドでゴール前へ送り、そこに飛び込んだMF末松が奇跡の同点ヘッドを決め、そのまま終了。
奇跡を信じていたことが現実となったあの瞬間、大声で雄叫びを上げてしまった。

PKは時の運。7人目で決着。西武台は3人外し、相手は2人外した。
夢の国立まであと一歩だった。しかし、負けたのではないのだから、あまり悔しさは感じない。

BUDAU28期生の高校サッカーはこの試合で終わった。

涙・涙・涙の卒業となったが、
人生よい事ばかりではないし、望み通りにならない事の方がずっと多い。
人生悪い事も起きるが、悪い事が永遠に続く訳でもない。
様々な経験をすることでその人の人生が豊かになって行くのだ。

高校サッカーの3年間を、次のステップにしっかりと生かしてほしい。

おつかれさま、そして ありがとう。


また新しい歩みが始まる。
卒業して行く28期生も、残った29期生や30期生にも。
BUDAI28からBUDAI28&2930へ







エルゴラ
「楽なゲームはない。PK戦までやるつもりでいけ」。西武台・守屋保監督の予感は的中した。

 開始10分、西武台は立正大淞南のファーストシュートで失点する。中央から崩され、最後はMF加藤大樹に決められた。今大会3試合連続で先制してきた西武台は、淞南の激しいプレスとコンパクトな陣形にハマり、「厳しい状況に」(同監督)。これまでのように狙いを定めてロングボールを蹴れず、大宮内定FW清水慎太郎も前を向いてボールをもらえない。さらに「フクアリは初めて。みんな慣れるまで緊張していた」(MF末松光)。ボールの奪われ方がまずく、淞南のショートカウンターが炸裂。失点後、前半だけで計3回もポストとバーを強襲していた。

 迎えたハーフタイム、「いままでもこんな展開はあっただろう。それを思い出せ」と守屋監督。この言葉で冷静さを取り戻した選手たちは、42分のチャンスを生かす。ようやく攻撃参加できた右SB澤本玲のクロスに合わせたのは清水。打点の高いヘディングでこじ開けて1-1の同点に。エースの一撃で西武台は一気にペースを取り戻したかに見えたが、59分にスローインからFW池田拓生に一瞬のスキを突かれ、1-2。すると淞南の南健司監督が動く。68分に投入されたMF福島孝男がトップ下に入る。「“守り切れ”というメッセージ」(南監督)だった。70 分以降はコーナー付近で時間稼ぎを開始。CKを獲得しても、自陣には8人残してブロックを形成した。マイボールにしても淞南の分厚い守備を崩せない西武台だったが、相手のミスからボールを奪った83分。DF町山阿記のクロスをFW佐々木雅人が中に折り返すと、中に待っていたのは末松。ヘディングでゴールネットを揺らし2-2に追い付くと、主審は笛を吹いてPK戦を告げた。

 迎えたPK戦。5人を蹴り終え4-4で迎えた6人目は両者とも決められず、7人目。西武台は途中交代のMF岡田和貴が外し、淞南はDF竹内洸が決めて、決着。淞南が島根県勢初の4強に進出した。(本紙・古屋 恭平)

◆守屋保監督(西武台)
子供たちにはここまでやってくれたことに感謝する。本当に負けないという気持ちをどれだけ持ちながらサッカーをやっていくかということで、日常生活の中でも負けないという気持ちを作るためにはどうしてもつらいことが多くなる。それを耐え抜いてやってきて、県の予選でも、インターハイ予選とかでもロスタイムとかで追いついて逆転したりだとか、そういうところがいくつかこのチームにはあったので、最後の最後まで今日も諦めないで負けないというのを前面に出そうと。簡単に勝てると思っていると本当に苦しむよと。今日はPK戦までやるつもりで戦うと。簡単に勝てるという気持ちを持たずに最後の最後までやろうと。そういうようなステーションになって、最後のところでPK戦ももっと強い、負けないという気持ちを持って臨むこともできたのかな、と思っている。正直なところ。勝負どころだから、そこまでもっともっとやれたのかなと。

でも、それを経験できた彼ら、自分も彼らに成長させてもらった。彼らの中には大学でサッカーやったり、プロでサッカーやったり、中には社長になりたい、歌手になりたいという子もいる。いろんな人生の中で、良いイメージだけを作って、欲だけを持つんじゃなくて、辛抱したり、我慢したり、いろんな世の中だから、それを乗り越えた時に本当の喜びがあると。ベスト8まで駆け上がってきた中で、少しでも経験として残っていると思うので、そこだけは胸を張って、今日はここで終わりということ、プラス、本当のスタートがこれからの人生の中にあるんだということを理解してもらえたんじゃないかなと思う。

(この大会に入って初めて追う立場になったが)追う立場になったのは、逆に厳しい状況に入ったなとは感じたけど、1点差だったらどうにか追いつくんじゃないかと気持ちでいたし、2点目取られた時もどこかでもうワンチャンス、ツーチャンス作ることはできるんじゃないかと進めてきた。失点はやはりつらかった。動揺がなかったってことはない。バタバタしているな、慌ててボールを蹴っているな、というのは感じたし。

サッカーの全国高校選手権優秀選手

今大会最多の8点を挙げたFW樋口寛規(滝川二)ら37人が選ばれた。優秀選手で編成された日本高校選抜は選考合宿を経て今春、欧州に遠征する予定。
 優秀選手は次の通り。
 
GK 櫛引政敏(青森山田)小沢章人(西武台)緒方大樹(流通経大柏)樫根啓人(関大一)▽DF 増田繁人(流通経大柏)大畠一馬(駒大高)金大貴(静岡学園)山本大地(久御山)土師直大(滝川二)中村謙吾、中村宏輝(以上立正大淞南)藤本貴士(大津)▽MF 柴崎岳(青森山田)平野伊吹(尚志)小島秀仁(前橋育英)進藤誠司、吉田真紀人(以上流通経大柏)宮本龍、白崎凌兵(以上山梨学院大付)星野有亮(静岡学園)二上浩一、足立拓真(以上久御山)谷口智紀、香川勇気(以上滝川二)加藤大樹、小田悠太(以上立正大淞南)車屋紳太郎(大津)山田貴文(日章学園)▽FW 小牟田洋佑(前橋育英)佐々木雅人、清水慎太郎(以上西武台)加部未蘭(山梨学院大付)宮市亮(中京大中京)坂本樹是、安川集治(以上久御山)樋口、浜口孝太(以上滝川二)

2011.01.03 第89回全国高校サッカー選手権 三回戦 作陽高校

第89回全国高校サッカー選手権 三回戦

2011.01.03  作陽高校(岡山県代表) (2-0) ☆ NACK5ス
タジアム(天然芝)




高校サッカー選手権三回戦。相手は、昨年の二回戦で負けた作陽高校。インハイ後の金沢遠征で対戦し1-2で負けている。
策略家の野村監督の出方が不気味ではあるが、是非ともリベンジしたい相手である。
攻め込まれる時間が多く、FK、CKが多かったがきっちりと守備を対応。攻撃では清水慎太郎の3人に囲まれながらのスーパープレーの先取点と、後半の相手の戦意を削ぐのに充分なヘディングで追加点。
攻守のバランス、役割がしっかりと結果として出たグッドゲームだった。選手権という大舞台で、このようなしっかりとしたゲームができることは「チームとしての強さ」があるということだと実感した。
本当に、強い、負けないチームとなったものだ。



ブログ 闘いの跡から

フクアリの試合にも非常に惹かれるものがあったけど、さすがに2日連続の千葉行きは厳しいものがあるので、今日はおとなしく近場の大宮へ。やはり、家から1時間以内に到着するスタジアムというのは有難い。フクアリまで行くと、電車賃も、かかる時間も倍以上になってしまう。


 西武台としては昨年の大会で敗れた相手とのリベンジマッチとなり、埼玉県勢としても、埼玉高校総体で埼玉栄が敗れた相手が作陽でもあった。 お互いに組織のしっかりした同士の対戦であり、少ないチャンスをものに出来るか否かが勝負のポイントになる。

立ち上がりは、両チームとも慎重なスタートを切って、極力セーフティーなプレーを心掛けて時間が進む。
中盤の10を経由して左サイドの17にボールを集め、そこからのドリブル突破からのクロスでチャンスを作る作陽が若干優勢に見える。 西武台の攻撃力のある右SBの2番を自陣に留めておくという狙いもあるのだろう、ともかく作陽はボールを持ったら徹底して左サイドからの攻め。 それに対して、西武台もサイドは多少やられても中のCB2人には強さがあり、クロスを上げられても中で跳ね返す守備はしっかりと準備できていた。 逆に言うと、作陽側にクロスに対して中で待つ人数や、上げるボールの精度に少し問題があった。 多く与えた相手のCKも何とかしのぎ切り、GKを筆頭に守備の硬さは安定感がある。

前半、西武台の攻撃としては、人数を掛けての攻めはそれほど出せないが、県の決勝の時に比べれば、前半から比較的ピッチを広く使ってボールを動かす事は出来ていた。
作陽の守備もしっかりしているのでなかなかボールはつながらないが、リスク回避のロングボールも県決勝の時ほど多くなく、チームは落ち着いている。 作陽ペースで進む中、西武台は最初のビッグチャンスを生かして先制点を奪う。マイボールになった時、FW清水がしっかり味方とアイコンタクトをして、 ここにくれと要求した所に素晴らしいボールが入り、それをスーパーなトラップで前を向くとドリブルで相手をかわし、最後は少しコントロールが大きくなったボールをスライディングで流し込む。 エースが、まさにエースらしいゴールを決めた事で西武台の勇気も百倍に。

後半、点を取りに作陽も前がかりに攻めに出てきて、西武台としても押し込まれる時間も長くなるが、前半同様、サイドは突破されても中の人数はしっかりと揃っていたので、それほど流れの中でやられる感じは無かった。 右SBの2も相手の17番が交代してからは守備にも余裕が出てきて、得意の攻撃参加からチャンスを作る場面も増えてくる。 西武台は左サイドを突破した11からのクロスを14が今度はヘッドで合わせて2点差にすると、後はきっちりとゲームを終わらせての完封勝利。

今年の西武台はともかく苦しい展開でも我慢が出来るチームで、粘り強く相手の時間を凌いで、攻撃陣の得点を待つ事が出来るのが強み。
攻撃力でいえば、最近の埼玉代表はそこそこあるチームは多かったけど、守備の安定度でいえば、ここ数年の代表の中ではピカ一だろう。 前線では2トップが献身的にプレッシャーを掛けるし、両センターバックはハイボールをきっちりと跳ね返す強さがある。GKも安定感抜群だし、相手より先に失点する可能性はかなり低いチーム。 それに加えて、ずば抜けたタレントというのはFWの清水くらいながら、各ポジションに武器を持った選手が揃っていて、チーム全体のバランスがすごく調和がとれていて穴というのが無い。

そして、エース清水の存在。
何だか、この大会の期間中にもグングン成長しているように感じるくらい、進路が正式に決定したことも影響してるのだろうか、自信と自覚がプレーから感じられ、その存在感が本当に大きくなっている。 今日の試合でも、違いをもたらしたのは彼の存在と言っても良いくらい、試合を決定づけられる選手になってきている。 守備の安定、チームのまとまり、絶好調のエースの存在。埼玉県勢久しぶりの国立の舞台へ、その視界は良好と言える。 作陽は中盤の10を経由して両サイドまではボールを上手に運べたが、そこから先、相手の固い中央の守備を破るためのもう一工夫が足りなかった。 いくら高さがあると言っても、中で9番一人が待っている所にクロスをあげるだけでは得点は難しかった。




スポーツナビ コラムから

鈴木潤
スポーツナビ 西武台、多彩な攻撃を可能にするストライカーの存在

<3回戦 作陽(岡山) 0-2 西武台(埼玉)> 2011年1月3日(月)

■チームのテイストが例年とは異なる理由

「西武台」と聞くと、かたくなにボールをつなぐ多彩な攻撃サッカーのイメージがある。それは、日常のトレーニングから個々のアイデアを生かし、狭いスペースでのパス回しを中心に行っているということもあるが、昨年度のチームが三浦大輝(現流通経済大)のようなテクニカルなタレントをそろえ、彼らの織り成すイマジネーションに富んだパスサッカーが非常に鮮烈なイメージとして脳裏に焼き付いているからだった。

 ただし今年のチームのテイストは、例年とは若干異なる。もちろん、西武台の持つコンセプトが根底にあるため、つなげるところは丁寧につないでいくのだが、それ以上にディフェンスラインから放たれる前線へのフィード、あるいはサイドハーフはもとより、サイドバックまでもが低い位置からアーリークロスを上げる場面が目立つ。

 その最大の要因は、FW清水慎太郎の存在にある。清水は大宮アルディージャへの入団が内定しており、身長176センチと上背は決して高くはないが、優れた身体能力と抜群のフィジカルを誇り、相手DFとのボディーコンタクトでもほとんど競り負けない規格外のストライカーである。キャプテンの松本和樹は清水をこう評する。 「清水はフィジカルが強くてボールをキープできる。ちょっとルーズなボールでも何とかしてくれる」

 作陽戦で清水が挙げた先制弾は、まさにこの形がピタリとはまったものだった。前半22分、右サイドバック澤本玲がゴール前にクロスを送る。清水が「裏を狙っていたけど、足元に来た」と振り返ったように、このクロスは出し手と受け手のイメージが合致していなかったのだが、清水はDFを引き連れて走りながら後ろ向きでトラップすると、その勢いのままクルリと反転し、前にボールを落とすとともに右足のシュートで鮮やかなゴールを決めたのである。 「あれは僕の得意な形でした」と清水は笑みを見せたが、並のFWでは反転の際にボディーバランスを崩すか、トラップした途端に相手DFに囲まれてなすすべを失うだろう。そうそうできるプレーではない。

■「戦術は清水」のチームではない  

また、前半28分のプレーも圧巻だった。後方からのフィードに対して、走りながら右足アウトサイドでトラップし、巧みに足元に落とした後は豪快に右足を振り抜いた。もちろんDFを引き連れながらである。このシュート場面は先制点と同等のインパクトがあったが、惜しくもバーをたたいた。得点には至らなかったが、清水の高い能力を物語るには十分すぎるプレーだった。

 さらに後半21分の追加点の場面。清水は「阿部(祐希)のクロスが良かったから合わせるだけだった」と謙遜(けんそん)気味に語ったものの、猛然とスペースへ飛び込み、頭で合わせてネットに突き刺したゴールからも、彼の持つパワーを感じさせた。こうした、清水という“武器”を生かすために、後方からのフィードや外からのクロスが増えるのは、当然の戦い方なのではないだろうか。

 ただ、西武台は1本のロングフィードだけに頼る「戦術は清水」のチームではないことだけは強調しておきたい。西武台本来の「つなぐ」というコンセプトもしっかり踏襲されており、長いボールとつなぎのメリハリを効かせている。清水は一発のフィードに対応するプレーだけでなく、ポストプレーにも長けているため、本来の西武台のコンセプトで戦う場合にも屈強なフィジカルと足元のうまさでくさびのパスを懐へ入れ、局面でパスサッカーを展開する際にも多大なアクセントを与えることができる。

 選手たちはうまく、繰り出す攻撃は多彩だが、どこか脆さもあったかつての西武台とは異なり、今年のチームには清水というスーパーストライカーがいることによって、今までになかった戦い方とパワフルさが備わっている。埼玉県勢10年ぶりのベスト8だが、この成績に甘んじるチームではない。彼らが狙うは、第60回大会の武南以来、29年ぶりとなる埼玉県勢の戴冠である。

<了> 鈴木潤 1972年生まれ、千葉県出身。2002年まで社会人リーグでサッカーを続けた後、フリーライターへと転身。主に柏レイソルを中心に国内ユース年代から海外サッカーまで幅広く取材・執筆活動を行う。現在は『週刊サッカーマガジン』、『サッカー批評』、『エルゴラッソ』などに寄稿。柏レイソルのオフィシャルイヤーブック、マッチデープログラムの記事も手掛ける。

2012年1月2日月曜日

2011.01.02 第89回全国高校サッカー選手権 二回戦 九州国際大付高校


第89回全国高校サッカー選手権 二回戦

2011.01.02  九州国際大付属高校(福岡県代表) (2-1) ☆ 埼玉ス

タジアム2002(天然芝)



 高校サッカー選手権二回戦。相手は、激戦区の福岡で連続PKで東海大五、東福岡を打ち破ってきた九州国際大付属高校。春の遠征では対戦していない初顔合わせ。
前半に佐々木のバックヘッドが幸運にもゴール。後半は清水慎太郎の左足のトラップ&左足の振り向きざまのシュートで2点。「J規格」の凄いプレーだった。
終了間際に相手10番にヘッドで1点返され、やや厳しい時間が続いたがなんとか守りきって勝利。1回戦よりは、前半から運動量が多く、支配する時間が多く、西武台のペースの試合だった。
相手のFW10番がヘッドが強かった。



エルゴラの記事
エース清水、さすがの一振り

「前半は競り勝てなくて…」。空中戦で苦しむエースは悩んでいた。すると、1-0で迎えたハーフタイムに守屋保監督は「ファーで待つんじゃなくて、ニアで受けろ」と指示。それを実践したのが50分。左SB大迫翔太の低空クロスを左足トラップから左足で逆サイドネットを揺らし、2-0。大宮内定FW清水慎太郎の一振りに、スタジアムは震撼した。守屋監督も「言ってすぐできるんだからすごいよ」と舌を巻く。もっとも、試合前日に誰よりもシュート練習に励んだのが「清水だった」(同監督)。1回戦で4発を決めた九州国際大付だが、西武台の2トップにゴールを奪われる展開をはね返せず。試合後、杉山公一監督は「うまいだけじゃないね」と清水に脱帽していた。(本紙・古屋 恭平)


STRIKER DX Match Report
立ち上がりから積極的に前に出た西武台が、前半17分に佐々木のバックヘッドで先制。その後、九州国際大付に何度かチャンスを許すが、フィニッシュのところで体を寄せ、前半を無失点で切り抜ける。後半立ち上がりこそピンチを迎えたものの、それを乗り切ると、後半9分に清水が鮮やかなボレーシュートを決め2点差に。終了間際に1失点をしたものの、粘り強い守備で攻撃力のある九州国際大付を退けた。

攻守がかみ合い九州の雄を撃破
サッカー王国再興の予感が漂う
 西武台がインターハイベスト4の実力の片りんを見せた。
 1回戦こそ香川西のムービングサッカーに苦しめられたが、初戦という重圧からの解放と、埼玉ホームでの試合を経験したことで、この日は攻守に持ち味を発揮した。
 まず目についたのが、持ち味の一つである守備力の高さ。素早いパスワークが特長の九州国際大付の攻撃に対し、それぞれの持ち場をきっちり整理して、入ってきた相手に集中する組織だった守備を披露。危ないシーンではチャレンジする人、カバーする人の役割を明確にし、決して無謀な飛び込みをしなかった。
 そしてこの日、特に効いていたのが、GK小澤章人。守屋保監督も「点を取った清水よりも、小澤のファインプレーを評価したい」と語ったように、彼が何度もピンチを救っていた。決して派手な横っ跳びはなかったが、その判断力とセービングは素晴らしかった。九州国際大付の攻撃は、トップ下に入った 田村友の意外性のあるスルーパスが特長。DFラインは何度か田村のアメージングなパスに反応できず、裏を取られていた。そのたびに、スイーパーのような役割も果たしている小澤が躊躇なく飛び出してきて、スライディングでセーブ。ときにはエリアから大きく出てきて、ダイビングヘッドでクリアするシーンもあった。
 そしてもう一つ、西武台で光っていたのが、清水慎太郎を中心とした攻撃。西武台には攻撃に明確な「型」があり、サイドからのクロスを清水がヘッドで競り、そのこぼれに佐々木雅人をはじめとする、2列目の選手が絡む形。この必殺パターンを生み出すために、左サイドに人を集めて、右サイドにフリーの選手を作り出し、そこから精度の高いクロスを供給していた。それがうまくいかないときには、右サイドバックの澤本玲から右MFの中村聡一朗に速いパスを通し、すぐさまアーリークロスを上げていた。
 この型通りの攻撃ができているときは、完全に主導権を握ることができていたが、この日はそれが長続きしなかった。時間帯によっては、相手にボールを支配されることもあったが、そんなときに抜群の存在感を発揮したのが、清水。前線に張る清水にパスが渡ると、彼はDFを背中でブロックしたり、すぐに反転してドリブルに入ったりして、とにかくボールを保持。時間にして5秒ほどのことだが、これでDFラインは通常の位置まで押し上げることができ、自分たちのペースに引き戻していた。
 さらにその清水は、後半9分に華麗なゴールまで披露。左からのクロスに走り込み、ファーストタッチで相手の逆を取り、回転しながらボレーシュートを突き刺した。クロスボールが少し後ろにそれ、通常ならファーサイドにトラップするところだったが、相手の読みを外すために、あえてニアにトラップした頭脳的なプレーだった。この清水のことをもう少し補足すると、身長176センチと決して大柄ではないが、ヘディングの競り合いではほとんど負けることはない。オフザボールの動きを見ていると、一度DFの死角に入り、そこから勢いをつけてDFの前に入ってヘディングをしていた。これについて聞いてみると、「勝つために編み出した方法」だという。
 この清水をはじめ、2試合連続ゴール中のFW佐々木、ボランチの末松光と松本和樹らが、試合ごとに調子を上げているように見える。サッカー王国の再興の日が近づいている予感がする。
 一方敗れはしたが、しっかりつないでゴールに迫る攻撃を見せた九州国際大付。両チームの実力に大きな差はなかったが、杉山公一監督が「清水君の能力が高く、防ぎ切ることができなかった」と語ったように、唯一決定力という意味で違いがあった。1回戦で途中出場ながらハットトリックをやってのけたFW田口光樹はまだ2年生。彼を軸に来年度再びこの舞台に帰ってきてほしい。

(監督・選手コメント)
西武台・守屋保監督
31日(1回戦)は間の抜けた試合になってしまったので、試合前のミーティングでは「今日が俺たちの最後だ。俺たちに明日はない。今日を生きよう」と、この試合に全力を傾けることを伝えました。選手たちはよく粘ってくれた。ただ2 0という点差の中で、ドリブルをかっさらわれて逆襲から失点してしまった。攻めて3点目を奪うのか、守り切るのか、戦い方がはっきりしなかった。うちはこれまで攻めて勝ってきたチーム。それを最後まで貫き通すべきだった。負けたくないという気持ちが出てしまって、腰の抜けたゲームになってしまった。心から喜ぶことはできない。

西武台・清水慎太郎
監督からは、パスを出してからもっと動けと指示があった。前半は自分たちがリズムをつかむまで、ロングボールを使うようにいわれていた。それがうちのスタイルでもある。1回戦を戦っているので、もう緊張感はなかった。(得点シーンは)左からのクロスをファーサイドにトラップしたらボールを取られると思ったので、逆を取ってニアにトラップした。本当はもう少し足元にボールを収めるつもりだったが、ボールが弾んでしまったので、ボレーにいった。

九州国際大付・杉山公一監督
お互いに守備意識が高いチームなので、どうやって得点を取ろうかと思っていたが、予想以上に相手の清水君の能力が高く、防ぎ切ることができなかった。



2012年1月1日日曜日

2010.12.31 第89回全国高校サッカー選手権 一回戦 香川西高校


第89回全国高校サッカー選手権 一回戦

2010.12.31  香川西高校(香川県代表) (3-0) ☆ 埼玉スタジアム2002(天然芝)


高校サッカー選手権一回戦。相手は、香川西。四国のチームであるが、関西地方からの選手が多い。5年連続6回目の出場。選手権の常連であり、過去2回インターハイの王者を一回戦で破っておりジャイアントキラーの異名を持つ。大浦監督は、守屋監督よりも年長で国士舘大学の先輩にあたる。過去高校選抜チームの監督にも抜擢されている名監督。対戦相手の分析と戦術に長けているようだ。 FWの大西を押さえる事、FW近藤(1年)にも要注意。チームとしては高さは不足している。180cm以上はCB 1人だけ。 スコアは3-0(前半0-0、後半3-0)▽得点者【西】佐々木、末松、清水(PK)▽交代【西】平野(中村)岡本(末松)岡田(佐々木)【香】金沢(伊藤)野村(金沢)

予想通り、西武台をかなり研究してきたなという印象の前半となった。ダイレクトパス、素早いプレス、サイドからの繋ぎで主導権を握られていたと思う。 相手の出方がつかめない最初の時間帯が特にピンチが多かった。なんとかしのいで前半終了。後半は、相手にも慣れてきたこともあり、少しずつ西武台がボールを持てる時間が増えてきた。 後半、末松の低い左からのクロスを清水が胸で落とすパスで佐々木の前のスペースに送り、走り込んだ佐々木が速い振りの右足シュートを右サイドネットに突き刺し先制。押し込まれた時間が続いたあとのFKを、左45度から末松がブレ玉無回転で決めて2点目。相手の足が止まった終盤に佐々木がGKに足を引っかけられPK。清水がきっちり決めて3点目。そのまま終了し、1回戦を突破。 押される時間が多かったが、相手のシュート精度が低かったこともあるがチーム全体のディフェンス力と得点の決定力の勝利。FW大西に自由に仕事をさせなかった事も大きな勝因。 ジャイアントキラーの香川西をしっかりと撃破。



サッカーオンラインマガジン 2002 worldcom記事

我慢強く戦った西武台。地元の大声援を受けて初戦突破 (取材・文・写真/中倉一志)
第89回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 西武台高校vs.香川西高校


2011年12月31日(金)12:05 埼玉スタジアム2002 観衆:5,300 天候:晴
試合結果/西武台3-0香川西(前0-0、3-0)
得点経過/[西武台]佐々木(44分)、末松(70分)、清水(80分)

 厳かにたたずむ埼玉スタジアム2002の前に長い列ができる。第1試合に登場するのは地元・埼玉県代表の西武台。おらが町の代表チームを応援しようと、大勢の高校サッカーファンが足を運んでいる。西武台は昨夏に行われた沖縄インターハイでベスト4に進出。今大会での活躍に地元サッカーファンも大きな期待を寄せている。フォーメーションは4-4-2。インターハイでは4試合で4得点を挙げ、卒業後は大宮アルディージャ入りが内定している清水慎太郎に注目が集まる。
 
 その西武台に挑むのは、香川県代表として5年連続6度目の全国の舞台を踏む香川西。一昨年は市立船橋、昨年は前橋育英と、ともにインターハイ王者を破ってベスト16入りを果たし、今夏のインターハイでもベスト16に進出するなど、全国レベルで十分に上位を狙える力を持っているチーム。今大会の目標を、まずは全国大会ベスト16の壁を破ることに挙げる。こちらもフォーメーションは4-4-2。エースストライカー・大西晃広を中心に、つなぐサッカーを武器に1回戦に臨む。

 両チームの戦い方は対照的だ。小気味よいリズムでパスをつないで前に出るのは香川西。豊富な運動量を武器に、高い位置からのプレッシングで西武台の自由を奪い、さらにセカンドボールも支配して、全員が連動した動きで西武台のスペースを突く。そして、右サイドから若村浩平と箱崎裕也が積極的に駆け上がってチャンスを広げる。1対1の局面でも西武台を上回る強さを見せ、全国大会ベスト16の力が本物であることを示す。

対する西武台の攻撃の始まりは、清水へ向かってのロングボールから。積極的に前へ出てくる香川西の右サイドの裏にできるスペースを使うことが狙いだった。しかし、香川西の高い位置からのプレスに戸惑い、前線で待ち受ける清水も、香川西・下川智史にタイトにマークされて自由なプレーをさせてもらえない。「やってみて感じたことだが、香川西さんが、あれだけ球際とか、出足が強いとは思っていなかった」と、守屋保監督(西武台)は戸惑いを隠さない。

そして、前半は一方的な香川西のペース。西武台が、香川西のパスワークを封じようとボールに喰らいつくことでできるギャップを効果的について香川西がゴールに迫る。そして、19分、24分に決定機を演出。さらに31分には、近藤義剛が左足で放ったループシュートがクロスバーをたたく。最終的にゴールは生まれなかったが、西武台は守備にばかり追われる展開。香川西のリズミカルなサッカーが目立った前半だった。

しかし、サッカーに判定勝ちは存在しない。最終的に相手よりもゴールを多く奪った方が勝ち名乗りを挙げる。そして、西武台は、まずは守備を修正することで得点チャンスを狙うべく後半をスタートさせた。その意図を守屋監督(西武台)は、次のように話す。

「人やボールに行くのではなく、まずはポジションを埋めようとハーフタイムに指示を出した。まずは攻撃よりも、シュートを打たせない、クロスボールを上げさせない、ワンツーをやらせないようにしなければいけなかった。それでも、守っている時間が長くなっても、決定的な場面を与えなければ、清水、佐々木にボールが入った時に大きなチャンスが来ると予想していた。それが佐々木と清水の持ち味。相手が3枚か4枚でも、1点はどこかで行ってくれるだろうなと思っていた」

 そして後半開始直後の44分、左サイドから上がったアーリークロスを清水が落とし、そのボールを佐々木雅人がゴール右隅に叩き込む。まさに狙い通りの得点シーン。リズムを掴めずにいる中で、自分たちの最大の強みを活かして奪ったゴールだった。

 その後も、パスをつないで前に出る香川西のリズムで試合が続いたが、落ち着きを取り戻した西武台は手堅い守備で、香川西にシュートを打たせない。そして 70分に末松光がFKを直接たたき込んでリードを広げると、終了直前にもPKで加点。苦しみながら3-0で初戦突破を果たした。

 結果として敗れた香川西だが、彼らが西武台を追いつめていたのは、守屋監督(西武台)の言葉からも窺える。
「球際の部分では、インターハイを通して、全国の場でもやれるつもりでいたが、思った以上に香川西さんの1人、1人の個の能力が高かったなと言うのが正直な印象。もう少しやれるんじゃないかな、パスも2本、3本とつなげるんじゃないかなという気持ちでいたのが本音。多分、選手たちもそう思っていたはず」
 最終的には、決定力の差のような形で敗れたが、香川西が自分たちのサッカーを余すことなく発揮していたのは間違いない。

 そして西武台。試合終了後、選手たちは「俺たちらしかったですね。いつもこんな試合ですよね」と、あっけらかんと守屋監督に話したそうだ。そんな選手たちを守屋監督は次のように話す。
「内容が伴わないことも多い彼らなんですけれども、それも自分たちの力と受け止めてプレーしているので、慌てずに、何もできない状況にも踏ん張って、チャンスをものにして結果を出してくれたような感じの試合だった。自分たちのことを分かりながらプレーしてくれたなと感じている」

 自分たちのサッカーのベースは自陣に押し込まれた後の粘り強い守備。後半も押し込まれる場面はあったが、それでも決定的な仕事はさせなかった。そのベースがあってこそ、佐々木、清水の決定力が活きている。そういう意味では、西武台も自分たちのサッカーの特徴を発揮しての1回戦突破だった。

(西武台高校)
GK: 小澤章人
DF: 澤本玲 大迫翔太 町山阿記 山崎健吾
MF: 中村聡一郎(79分/平野泰幹) 松本和樹 末松光(80+1分/岡本達郎) 阿部祐希
FW: 佐々木雅人(80+2分) 清水慎太郎

(香川西高校)
GK: 今林宏憲(77分/退場)
DF: 石谷守 米田昇平 若村浩平 下川智史
MF: 佐々木卓弥 高橋佳汰 箱崎裕也 伊藤星斗(18分/金沢裕平→79分/野村秀樹)
FW: 大西晃広 近藤義剛